葉っぱ よみがえる千島学説

2006年5月1日

書店で並ぶ書籍や、メディア等でよく目にするデトックスという言葉。デトックスとは-de(排除)tox(毒)という単語で、体にたまった毒素を取り除くといった意味だ。今や、デトックスに結びつくものが盛んである。岩盤浴を併設した施設もその一つだろう。また、驚くことに家庭で簡単に出来る腸内洗浄の利用者は、全国に10万人を越えるという。スーパーモデルやマドンナ、ジャネットジャクソンもやっているといった噂が、その利用に拍車を掛けているのだろうか。便秘で悩む若年層の支持も強いようだ。食物繊維を豊富に含む食品や玄米菜食も当然のことながら注目をされている。食養の大家がかつて延々と唱えていたことが、今や当然のように語られるようになってきた。しかも最も重要とされる腸への関心は、その後の医学を変える力となるかもしれない。
今でも思い出されるのが、20年近く前、友人の誘いで中学校の恩師と会う機会があった。久しぶりの再開に積もる話も一段落した後、なぜか話題は健康論に、そこで血液はどこで作られるのかという話になった。当然習った通り骨髄で作られるのでは?と問い返したところ、その恩師は、腸で血液が作られる腸造血説を信じています。と強い口調で話されたのだった。何のことかさっぱり分からなかったが、その言葉だけは脳裏に焼きついた。時間とともにその言葉も忘れそうになったある日の東京でのこと、ふらっと立ち寄った書店で目に飛び込んできた一冊の本が、腸造血説を説いた千島学説入門だった。
血液学の定説によると、赤血球は毎日二千億個の赤血球が消滅し、誕生する(赤血球がその寿命をおよそ115日としていることから逆算したもの)。その働きを、酸素の供給と二酸化炭素の排出を行っているとしかみていない。それは赤血球が核を持たないために細胞とは別個の存在とみなしているためだ。これに対し千島教授は、赤血球は、生殖細胞や他の細胞に分化していくという生物学の常識を破った事実を発見し、さらに、食物の消化産物(食物モネラ)から腸の絨毛組織で赤血球が造血されるという「腸造血説」を唱えたのだ。血液学に関する定説に疑問を投げかけ、その実証に力を注いだ千島教授の画期的な論文は、定説を根底から覆すものであったため、黙殺されることになるのだが、今日になってその説の輝きは新しい息吹となって到来する予感を感じさせる。デトックスが重要なのは、単なる排泄する器官としか思っていなかった腸の働きが生命を生み出すもとであり、食物が私たちの体を流れる血液を造っていることに少なからず気づかされたことではないだろうか。
食事をしながらふとテレビに目をやると、大騒ぎの取材陣が一人の男性を囲んでいる。保釈された堀江被告である。その顔は腫れ物でも取れたようなすがすがしい青年の顔だった。拘置所内での粗食のおかげか、約3ヶ月で8キロ痩せたそうだ。(米7:麦3のご飯に魚等のおかずが一品ほどらしい)
食養の先駆者である水野南北は語る。食物は生命なり”“運、不運はことごとく食物からおこる”“腹八分に禍なし”と。人の運命は、食生活で変わる。いま、運命が順境であっても、美食、大食におぼれれば傲慢となり、性格も粗野に走りがちになる。やがて運命にも行き詰ることになる。逆に、いま逆境であっても粗食に甘んじれば忍耐強くなり、性格も温厚になり、やがて運命も開くと。
そんな言葉を自ら戒めながら、時代の風雲児のすがすがしい顔つきは、私たちに何かを語っているような気がしたのである。

参考著書:千島学説入門 忰山紀一著  名人たちの東洋医学 忰山紀一著
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