葉っぱ 今年で丸十年

2022年5月3日

 2011年、東日本を襲った震災は、その後の原発の影響も重なり、胸が締め付けられるような切ない思いが悶々とたまって、何か自分にもできることはないかと思い巡らしていました。その翌年のこと、大学の先生が生徒と一緒に耕作放棄地を里山に回復させたいと頑張っている話しを耳にしました。年々耕作放棄地は増え続けいます。42万ヘクタール、滋賀県の面積分くらいが放棄されている現状です。他人事ではありません。これだ!と思って、その先生に手伝わせてほしいとお願いにあがったのが10年前のことになります。
 ご縁とは不思議なもので、その場所は、当時勤めてもらっていたスタッフの妹さんが住んでるところで、しかもそのご主人も、里山作りの先生に協力しているということでした。
 田んぼのある場所は、大井漁港からほど近くの、御所の奥と言われる地名で、名前の通り人里から少し奥に入ったところにあります。周りを山が取り囲み、はるか山間から注がれる小さな川が田んぼを潤していました。ウグイスがさえずり、山のはるか上空に鳶が悠然と飛び、そよぐ風が心地よく、心が洗われるような場所。こんなところでお米作りができることにワクワクしました。そう思ったのもつかの間、田んぼ2枚を任されて、いざ作業にとりかかろうと足を入れると、ずぼっとヒザ下まで沈み込みました。年中水に浸かっている
田んぼはそんなもんだと、あとから聞かされましたが、歩くことすらままならず、その中を備中鍬で、田起こし作業。よれよれになりながらもなんとかやり遂げた一年目でした。鍬一本で起こして、田植えももちろん、稲刈りも稲架掛けもすべて手作業で収穫したお米です。感無量でした。
 3年目には、スタッフも手伝ってくれるようになり、収穫したお米をカフェで提供するようにしました。幸い、年々、米作りする仲間が増えてきて、今年は、とてもゆったり作業できています。毎年田を起こしながら、雑草を地中に埋めるか外に出します。みずみずしい緑色のセリが一面に広がっているのですが、雑草にしか見えません。お構いなしに埋めてしまっていました。しかし今年は、これまで
と違って、一ヶ月前から作業していますから、心に余裕があります。それをバケツいっぱい収穫して、スタッフと分けて、残りは家で鍋にして食べました。
 お米の品種はイセヒカリ。当店で販売していたイセヒカリの農家さんが廃業するということで、分けていただいた大切な種籾です。苗作りは、友人の農家さんにお願いしていましたが、区切りの今年は、それも一貫してすべて自分たちで行うことにしました。はてさて元気な苗ができるかどうか。
今年も波乱に満ちた展開で進んでいますが、すべてが経験ですね。今年になって、分かったことがたくさんあります。やり続けることでしか分からないこともあるんですね。
 人口約80億人となった地球に生活して、いよいよ水や食料が枯渇するとNHKスペシャルで特集されたのは昨年のことでした。2030年がその分岐点であると。
私達が何を選択し、どう生きるかが問われる残りあとわずか8年です。