葉っぱ 食べることは生きること

2023年6月2日

 日曜日の朝6時45分から、NHKラジオ第2で「こころをよむ」という番組が放送されています。前回までは、古事記の話でしたが、店に向かう車中でたまたまやってたのを聞いてると、神話の謎が解けたような、分かりやすい内容で、つい聞き入ってしまいした。12回続いた古事記の話しは断片しか聞けませんでしたが、今度新たにスタートする題名が「食べることは生きること」と紹介があったので、思わず聞き耳を立てました。医学博士で、管理栄養士の本多京子先生のお話しでした。
 江戸時代中期の観相学の大家、水野南北先生の「食は命なり」、人間の一生の吉凶は皆只その人の飲食による。恐るべきは飲食である。慎むべきは飲食である。という名言がありますが、本多先生の語りは、その一部紹介から始まりました。そして料理の漢字の意味することとは、料が「計量する、数える」こと。そして理は「ことわり」で道筋を立てて整えることを表し、食材の分量を量り、順序だてて仕上げていく意味であることを教えていただきました。
 NHKの大河ドラマ「どうする家康」で、今、岡崎や静岡、江戸時代に光が当てられていますが、その時代の大臣や将軍の妻に対して用いられる敬称は、御台所といいます。いかに食を扱う人が重要視されていたかが分かります。
 料理をする前には、まず何からすべきかと思いを巡らします。そういう毎日の訓練が、塵も積もって生きていくうえで大きな力になっていることを感じます。最近は、料理をしない人が増えているといっても、高齢化社会の真っ只中で、自活できているのは圧倒的に女性ではないでしょうか。食べることは、日々の繰り返しで休みがありません。そんな大変な家事(仕事)をこなしたことが、生きることを下支えしている証ではないでしょうか。一方、食は他人任せで、何もしてこなかった主に男性の老後の悲惨さもこの先生が冒頭に紹介した言葉に集約されている気がします。
 毎週続けての12回講座。1回目を除いてすべてNHKホームページの聴き逃し番組で聞くことができます。毎回テーーマに気づきがあって、とても参考になると思います。そして手間のかかる調理を、短縮できるアイデア料理も毎回紹介されています。
 そんな第一回目は、「思い出は、食べ物につながるものばかり」でした。私もそうですが、カメラ機能の付いたスマホで撮ったものは、料理の写真や一緒に食事をした人などと写したもばかり。家族や友人、知人、会社の同僚など、様々な場面の写真があると思いますが、スマホのアプリで、過去何年にも渡って撮った写真が、さかのぼって、その日の映像が思い出として見ることができます。その殆どが食べ物。確かにつながっていました。
 本多先生のお母さんは、98才になるそうですが、そのお母さんが鮮明に覚えていたのが、子供のころに食べた甘くて新鮮なトウモロコシだったそうです。大きなお鍋にお湯を沸かしておいて、家族でトウモロコシを収穫し、その新鮮なトウモロコシを湯がいて食べたということ。それは美味しかったでしょう。しかも、その食べ終わったトウモロコシの芯でお兄さんたちとチャンバラごっこをしたことまで覚えてるんです。お母さんの思い出は、すべて食べ物につながる記憶と結びついていたといいます。
 そういえば私の母も、亡くなる数か月前に、外食を一緒にしようと、名古屋までお寿司を食べにいったのですが、翌月は中華が食べたいということで、お店まで自分で予約していました。しかしその日が近づくとともに、身体が衰え、あえなくキャンセルをしたのですが、とても残念がっていました。せめて好きなものを食べさせたかったのが心残りでしたが、これも、食べ物につながる思い出として残っていくことでしょう。
 食べることは、生きること。とても当たり前のことですが、同時にとても深い言葉として、心に響いています。

「食べることは生きること」本多京子(著)ムック 書籍もあります。(店頭にも置くことにしました。)