葉っぱ ゆとり教育

2005年5月1日

ある日の天声人語を読んでいると、とても心に染み入る詩が引用されていた(下記をご参照下さい)。読み返してみると、皇太子さまがご自身の誕生日にあたって記者会見で読み上げられたもので、「あなた自身の社会-スウェーデンの中学教科書」に収められている「子ども」という詩ということが分かった。この本は、法律上の義務と権利、社会制度、人間関係などを中学生に考えさせながらわかりやすく解説した教科書で、スウェーデンで91年に出版されたという。もう十数年前のことだ。
私の学生の頃の思い出といったら分厚い教科書を紐解きながら分かりにくい授業を聞いていた記憶が大半を占める。その頃、両親や先生によく言われていたことというと、「あの頃もっとやっておけばよかったと後悔しないように勉強しろ」だった。今になってあの頃を想像しても後悔する気持ちはない。やはりやってなかっただろうなと思うからだ。私の場合、そんなに楽しくて熱中できる授業がなかったのが理由か、出来が悪かったのかどちらかだろう。そんなことより、担任だった先生の顔が学年ごとに浮かんでくる。どの先生も懐かしくて会いたいと思えるからだ。さんざん怒られはしたが慕う気持ちは今も変わりはない。それは勉強の出来不出来ではない人の間としての関係で成り立っていたからだと思う。
絶えず問題になっているゆとり教育。詰め込み教育を否定し、週休2日制の導入など時間のゆとりばかりで、教えるほうも教えられるほうも一番大事な心のゆとり(間)が無くなっているのではないだろうか。中学校でこのような詩が学ぶことができるスウェーデンは、なんとゆとりのある教育だろうかと思ってしまう。


「子供」

批判ばかりされた 子どもは
非難することを おぼえる

殴られて大きくなった 子どもは
力にたよることを おぼえる

笑いものにされた 子どもは
ものを言わずにいることを おぼえる

皮肉にさらされた 子どもは
鈍い良心の もちぬしとなる

しかし、激励をうけた 子どもは
自信をおぼえる

寛容にであった 子どもは
忍耐を おぼえる

賞賛をうけた 子どもは
評価することを おぼえる

フェアプレーを経験した 子どもは 
公正を おぼえる

友情を知る 子どもは
親切を おぼえる

安心を経験した 子どもは
信頼を おぼえる

可愛がられ 抱きしめられた 子どもは
世界中の愛情を 感じとることを おぼえる

(「あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書」アーネ・リンドクウィスト、ヤン・ウェステル著/川上邦夫訳)