葉っぱ 悲報に想う

2018年10月1日

「お店もそこで働く子供たちも、社会のものです。」今も胸に響くこの言葉は、今から十数年ほど前、当時のポランの広場を、新たに宮澤さんに引き継いだころ、私との会話の中で語られたものです。言葉の主は、ゾンネ野菜共同購入会立ち上げの発案者、中久木方子さん。この店を引き継いで以降ですから四半世紀のお付き合いでした。
 ポランの広場にはじめて伺ったのはそれ以前のこと。うっすら記憶にあるのは、たくさんの本と、木製品の棚や机、大きな冷蔵庫などで、残念ながらそれ以上は思い出せません。記憶が鮮明になるのはパン工房が隣にできてからで、そこまで毎週月曜日の六時頃にパンを取りに行っていたこともありました。
 その後息子さんがパン工房を独立させて、星ヶ丘に、Meisterかきぬまs Backstubeをオープン、そして五年前に今の淑徳大学近くにその拠点を移しました。工房がなくなったポランの広場は、カフェに改装されてしばらく営業していましたが、それを引き継いだのが宮澤さんです。そのポランの広場を十四年に渡って続けて来られましたが、三年前に体調を崩したことにより、惜しまれながらも閉店いたしました。不思議なもので、その数日前に、中久木さんとそこではじめて食事をともにしたのが今となってはいい思い出となりました。駆け足で移り変わっていくお店と時代の変化に対応しながらも、しっかりと前を見据えたお話しの中で、その言葉は繰り返し語られたのでした。
食 事をしながら見渡すと、ご近所のご年配の方々からお子さんと一緒の若いお母さん方など、年齢様々な方々が行き交って、まさにコミュニティーという感じがしました。まさしく社会のものとは、そういうことなんでしょう。そこになくてはならないものなんです。
 現在はイタリアンのお店に変わりましたが、宮澤さんは引き続きその場所で料理教室を行っているそうです。
 大きな時間の経過は、記憶や人間関係を風化させていくように思いますが、心に残っていることは、時間が経っても昨日のことのように思い出されるものです。中久木さんの悲報をお客様から教えられたのは先月始めのことでした。昨年の暮から腰を痛めて思うように動けなくなったため、外出ができなくなったことから、急に弱ってしまったそうです。確かに、常に動いていた人一倍お元気な方でしたから、思うように体が動かないというのは、とても辛かったでしょう。そんな時にお会いできるチャンスがあったらと思うと、残念でなりません。
 本当にお疲れ様でした。ゆっくりお休み下さい。そしてよりよい社会になるようにこれからもお導き下さい。