葉っぱ 10年ぶりのご縁

2010年7月1日

福島県でマクロビオティックの宿を経営する大屋夫妻を招いて行われた先月のスイーツ講座は、キャンセル待ちや、お断りした方が多数にのぼった。米粉で作るベーキングパウダー不使用のスイーツや、卵、ベーキングパウダー不使用で作るエクレアなど、興味をそそる内容だから無理もなかった。知る人ぞ知るといううたい文句がピッタリな料理人大屋さんだが、反響の大きさには本人も驚いていた。一方、講座よりも昔話に花を咲かせたい私にとっては、再会を不思議な思いで受け止めていた。
タンボロッジをスタッフとともに訪れたのは、今からちょうど10年前のことになる。その当時、巷では、手づくりでビールを作ることが流行っていた。当店もその講習会を何度もしたことがある。そして実際に出来上がったものをみんなに振舞っては半分自慢していた。そのビールを造るモルト(原
料)は、次第に口コミで広がり、全国あちらこちらから注文が入っては発送していた。その中の一人が大屋さんだった。はじめは電話で二言三言話すだけの関係だった。それが一転したのは、不意に送られてきた自家製ビールだった。その味のあまりの美味さに、お礼より先に作り方を迫ったものである。近くで取れる天然のホップやフルーツを入れて作ったという力の入れように、すごすごと白旗を揚げた。それ以来、遠い距離でのやり取りは頻繁になり、はるばる訪れる動機となった。福島県の舘岩村に通って年月7年余り、着工から1年8ヶ月かけて夫婦2人で製作したログハウスは、来訪客を
やさしく包み込むオーラを発していた。初めてお目にかかった大屋さん(ご主人)は、恰幅のいい、いかにもグルメ愛好家で、自慢の南米創作料理と、自家製ビールに酔いしれた。そして秋の紅葉シーズンが、いっそう舞台を華やかに彩り、自然を満喫した1泊2日の旅だった。
時の流れというのは、時に不思議な共時性を与えるものらしい。スタッフへ入った講座の情報がそれを促すことになった。東京で行われる米粉のスイーツ講座の講師が、あの大屋さんと言うからだ。どうしてマクロビスイーツを?頭にあの時の体型が浮かんできて結びつかない。そのなぞを解こうと上京し、10年ぶりの再会を果たしたのが3月終わりのことだった。お互い顔を覗き込むなり、どうしたんですか?が、第一声。10年前と比べ、大屋さんは30kg、私は10kg近く痩せていたので無理はない。南米旅行で食あたりにあい、一週間近くの断食状態が続いたのがそもそものきっかけだという。体調が回復した頃には、肉や魚を食べたくなくなったそうだ。それからひと思いに、自分も宿もマクロビオティックな食事に切り替えて5年になると言う。なるほど、思えば私も紆余曲折あり、3年ほど前からカフェをマクロビオティックに切り替えた。体を動かすことも苦にならなくなり、どんどん体質は変わった気がする。一連の出来事は、食事を変えたことが共鳴しあって結びつけたご縁のように感じたのである。
習慣を変えることは難しい。変わらないのが一番心地がいいからだ。しかし、不調を感じるなら何かを変えてみることだろう。次第にその変化が心地よくなるに違いない。そして新たなご縁を生んでくれることを教えてくれたような気がした。