葉っぱ 百匹目のサル

2003年9月1日

百匹目のサル。ある現象が一定量を越えると、一気に他の者たちに広がる現象を言うその言葉は、ライアル・ワトソンという学者が、宮崎県最南部にある幸島のニホンザルがある行動を起こしてその行動が広まったことから名づけられたそうです。その行動を見た第一発見者は、子猿がイモを水辺で転がして遊んでいるのかと思ったといいます。しかしその行動こそ、泥つきの芋を洗って食べる不可思議な行動だったわけですが、その習慣がだんだん広がり、6年たつと島のほとんどのサルたちが芋を洗って食べるようになったというのです。このイモ洗い行動はサルによる文化の創造として世界的に有名になったのですが、もっと驚くことに幸島独自の文化と思われていたイモ洗いは海を越えて大分県の高崎山自然動物園でも自然発生したのです。
一方イギリスのBBC放送は、「クロスワードパズル」の実験でこれと同じような現象を報告しています。一見すると何が描いてあるかわからないな図柄を、見た人々が認識できるかどうかという実験を行ったところ、その正解率は、その絵をテレビで放映し、答えも教えたことで何百万人もの人がこの絵を見た後、まだこの絵を知らない人に絵を認識させると、今度は正答率が上がっていたというものです。
ここで、正解率が高いのは「正解」の意識が解答しようとしている人たちに伝わるからという仮説〔シェルドレイクの仮説〕を立証したものでした。2つの事例は、ある意味で集団の意識が社会を変えるという可能性を含んでいます。世情不安が生み出すテロや犯罪の増加は、そうした不安の連鎖が引き起こしている要因の一つとしてとして考えるなら、その連鎖はエスカレートの一途をたどるように思われます。しかし、逆の意識として世情を捉え、連鎖を断ち切ることも可能なはずです。犯罪を起こす影に潜む食生活。幼児期からジャンクフードに慣れ親しまされ、低血糖症で精神的に混乱をきたす事例が増加の一途をたどっていますが、一方で日本の食文化に光が当てられ、玄米食や郷土料理が復興しつつあります。食生活の改善による意識の更正が大きな変化を与えるかもしれません。
今から三百年前に著された『養生訓』の中で貝原益軒が次のように喝破しています。「飲む水や食物はよく選べ、それによっては人の天性まで変わる」

参考著書:「なぜそれは起こるのか」喰代栄一著