葉っぱ 新日本風土記

2022年6月1日

 ここ数年、世界情勢が緊迫している最中に、ますますどうでもいいような内容ばかりの民法番組が、毎日うんざりするほど流れています。ニュースも同じ事件をこれでもかと繰り返すばかりです。テレビを見ない人が増えるのも当然だと思いますが、我が家はBSプレミアムにほぼ固定しています。
 ずいぶん前のことになりますが、そんなBSの番組がNHKに変わっていたことがありました。デイサービス休みの日に、父がチャンネルを変えて一日見ていたのでしょう。帰宅して父を見て驚いたのが、一人で家にいたというのにマスクを着けていたのです。その目線の先は、コロナ禍のウイルスの恐怖や注意点をコンコンと説明するNHK特設サイトでした。CMのように何度も流れるため、恐怖や不安を感じた人は多かったでしょう。
 そんな「表」のNHKもあれば、「裏」もあります。BSプレミアムでは、失われつつある日本国内の貴重なドキュメントを配信しています。いまからおよそ40年前に放映されていた新日本紀行。それを放映しながら、半世紀たった現在の様子も伝えています。社会の変化に翻弄しながらも、そこには人の営みがあります。忘れ去られようとしているものを追い求めての取材ですから毎回心を打つものがあります。
 つい先日も四年ほど前に放送された新日本風土記 選「佃・月島」がやっていて、運良く見ることができました。新日本風土記も、日本各地に残された美しい風土や暮らし、人々の営みを描く本格的な紀行ドキュメント番組です。
 先々月は、選「東京 檜原村」を見ました。80歳以上が5人に一人という高齢化の村。それなのにその陰りがなく、人様の厄介になることもなく、活き活き暮らしてる姿がありました。かつては甲斐への道が通じ、杉やひのきの産地として大いに賑わったそうです。90%以上が森林という林業の町。それが安い輸入材に押されて国産材の不振で人口は最盛期の3分の1の2200人になり、山を所有する林業家は一軒になってしまったそうです。その一軒が、江戸時代から続いている十四代目の田中さん。先代が植林した木を切りながら道を作っている姿がありました。年間、2~3kmの道をパワーショベルで切り開くために切り倒すそうです。道を作っていれば、材木が運べる。そうすれば次の世代に繋ぐことができると語る姿は、まさに失われつつある命の営みの大切さでした。最近は、木をそのものを売るのではなく、薪にしたり、間伐材を利用することで、山が自然と次の苗が育つ環境作りをしているそうです。
 選「佃・月島」は、東京のど真ん中で、 いまだに江戸情緒を残すレトロな町として多くの観光客が訪れているところで、住吉神社の例祭「佃祭」に密着したものでした。ここは、徳川家康公が関東に下降の際、 摂津国佃村から漁民三十三人を呼び寄せ、鉄砲州向干潟を埋め立てさせ佃島と命名し住まわせたことに始まっそうですが、まさしくその時代にタイムスリップしたような町並みや情景で、人情までその時代のままのような気がしました。
 失われつつあるものに、あえて目線を合わせて次の時代に伝えていくこと。これが、敗戦の昭和から今まで一番欠けていたことではなかったでしょうか。そう思わせてくれる番組が、まだ作られています。むずかしい時代を生き抜くヒントは、そんなところにあるのではないでしょうか。