葉っぱ ダムネーション上映会を前に

2015年6月1日

 「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そしてビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」 このダムネーションを制作したパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードの言葉である。1970年代には米国最大のクライミング・ギアのサプライヤーでありながら岩を傷つけるギアを作ることで自然に害を与える張本人となってしまった。その後彼はその事業から撤退し、ハンマーを使わず手で岩に押し込んだり抜いたりできるアルミのチョックを開発したという。
 ダムネーション、この映画の概要をご紹介させていただこう。アメリカ全土には、なんと7万5千基のダムがあるらしい。しかしそれらの多くは、川を変貌させ、魚を絶滅させ、それにもかかわらず期待される発電・灌漑・洪水防止のいずれにおいても低い価値しか提供していない。むしろダムの維持には高い経済的コストもかかっている。そんな負の面ばかりのダムを「撤去」する選択が、アメリカでは現実になってきた。この映画は、そんな無用なダムを次々と爆破して撤去していくことにより、川が解放され、みずから元の姿に回復していく過程をフィルムに収めている。
 なぜ今この映画か。今回この上映会を主催する気持ちになったのは、愛知県にも巨大なダムの建設が行われようとしているからだ。今から40年前に計画が持ち上がり、その計画も一旦は民主党政権時に凍結されたものの、自民党政権に戻ってからまた公共事業の大幅な拡大路線の一つとしてダム建設も息を吹き返した。本来ダムというのはその性質上、洪水調整や治水目的で運用されたり発電などに用いられる。ところが最近のダムは、その方向性があやふやになってきた。この設楽ダムにしても元々は発電ダムとして調査が開始されたのだが、今になっては「流水の正常な維持の目的」?どういうこと?? つまり川に流すための水を蓄えるということに主目的が変わっていた。こんなことのために2000億もの税金が使われようとしている。こんな目的ために、故郷を失う人たちがいる。寒狭川峡谷に沿って走る国定公園区域が水没しようとしている。さらに、今や陸揚げ日本一である三河湾のアサリにまで被害が及ぶ可能性さえある。三河湾六条潟は干潟や浅場が多く、あさりが生育する条件にとても恵まれている。ところがダムによって、下流への土砂供給が乏しくなるおそれがある。一体、誰にとって有益な事業といえるのだろうか。日本一の特産品とまでになった漁業にも不利益をもたらしかねない公共事業を、なぜ県民を守る立場の行政が、国と一体となって推し進めるのか。このような理不尽なことに声を上げなければ、ゆくゆく私達の住む場所さえ、追われることになるのではないか。
 世界有数な企業が集まるここ愛知県。しかしその中に、県民と地域の環境のことを考えてる企業はあるだろうか。外資系企業であるパタゴニアが自ら映画を制作し、それを社員が一丸になって普及している。一人一人の行動がそのまま自らの仕事になっている。人間本来の豊かさというのは、きっとそのような生き方ができることではないだろうか。 ちなみに私達は1日に平均して240㍑の水を使用している。その主な使い道で群を抜いて多いのがトイレや炊事、洗濯という洗う目的で、なんと90%以上の水を浪費している。この洗い水を一人一人が一日1㍑でいいから節約すれば、全国から不要なダムはなくなるのではないか。そのことを私達は3・11で学んだはずである。

 ぜひ、当日足をお運び下さい。前売券は当店でも販売しています。