生きる Ⅱ
2010年10月1日
先月ご紹介した野良の子猫に名前をつけた。その名は『あい』。店の名前そのままである。ここに来たのも何かのご縁。そう思うとペットショップで買ってきた離乳食用の餌がやけに気になる。そこで思いついたのが玄米粉、それをクリーム状にして餌に混ぜて与えている。離乳食から人間と同じ食べ物でいいのかどうか少し不安はあったが、顔じゅうベタベタにしながら食べている姿を見て安心した。お客さんに話すと、それは贅沢すぎるという。しかし、手間はかかるが、あきらかに市販の餌よりはるかに安くすむ。それでなおかつ健康に良いなら言うことない。かれこれ1ヶ月、今は庭を走り回るようになり、離乳食から普通食に移行している最中である。 それにしても今までご縁がなかった。ペットショップには驚いた。大型店で買い物をしたのだが、その広さだ。餌のコーナーだけで、当店の売り場と同じくらいのスペースはある。当然のことながら猫より犬のほうがはるかに広い。買う側にしてみたら種類の多さにうんざりしそうなのだが。昔を振り返れば、犬を飼っていたころ、餌といったら猫飯、要は残飯だった。ペットブームの今とは比較にならないが、人間様同様の至れり尽くせりの品揃え。そこに、現在抱える病根を垣間見た気がした。
先月5日の西日本新聞の記事をNPO法人大地といのちの会の吉田俊道さんが送ってくださった。その記事とは、4年前から吉田さんの指導を受けて長崎県のマミー保育園が、自園の給食を、白米から三分づき、野菜を皮付きに変えたところ、インフルエンザによる欠席者が激減するなど、子ども達が元気になったという内容だ。さらにその中で、安価な一般的な調味料と皮むき野菜を使用したものと、皮付き野菜をこだわった調味料で調理したもの、調理法と調味料の違いでどこまで栄養素が変化するかを調べている。亜鉛や葉酸など7種類のビタミン・ミネラルの分析結果は、約5倍の違いがあったカルシウムを筆頭に、すべて後者が上回ったことが、しっかりしたデータで示されていた。脳の複雑で繊細な機能を順調に動かすためには、たくさんの脳内伝達物質が消費されている。体の中では、生命活動の一環で、常に化学反応が起きている。それらにはすべてビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素など微量栄養素がかかわっている。それが手間をかければかけた分だけ多くなり、おいしくなり、体に良いことを明らかにした貴重な記事だった。生きることは、食べることの繰り返しである。それが健康に大きく左右することを、この記事で昼食だけ食べた園児が雄弁に語っているのだ。
「功の多少を計り、彼の来処を量る」(目の前にある食事が、作られてここに来るまでにかけられた多くの手間と労力を考えなさい)食の崩壊と戦った道元禅師の言葉が浮かんでくる。そして、どういただくかという心持まで踏み込んだ教えが後世まで伝わった「いただきます」「ごちそうさま」。
普段何気なく使っているが、その言葉の意味をかみしめてみる必要があるのではないだろうか。
(五観の偈(ごかんのげ))
一には、功の多少を計り彼の来処を量る。二には、己が徳行の全けつをはかって、供に応ず。(自分は食を受けるに足りる正しい行いをしただろうか?と思い考え反省しよう)
三には、心を防ぎ、過るを離るる事は貪等を宗とす。(迷いや過ちを犯さないように、貪り・怒り・愚かさ、の3つをなくすように心がけなさい)
四には、正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為なり。(食事というものは良薬である。身を維持し痩せて衰弱するのを防ぐ。ゆえに大切にして良薬と思っていただきなさい)
五には、道業(成道)を成ぜんが為に当にこの食を受くべし。(仏道を成就するという目標の為にも、身を養うこの食事をいただきなさい)
西日本新聞の記事
http://9021.teacup.com/x4322eaa/bbs
この9月9日のところに掲載されています。