万病の元
2010年4月1日
“Cancer Never Affects a Healthy Organという衝撃的な言葉を含む文献からご紹介したい。「おそらく、現代においてもっとも顕著なるものは癌であろう。しかし、癌はけっして健全なる器 官をおかさない。私が検証し得たところによれば、がん患者は慢性腸マヒすなわち便秘に悩まされているものであり、がん病毒の感染は、こうした状態の間接 的結果に過ぎない・・・」(英国医学雑誌転載)。また同氏は、「自家中毒症は、女子生殖泌尿器管の疾患発生上において、きわめて大きな役割を演ずるもので ある。したがって、婦人科医もまた、腸マヒの産物とみなしえるだろう。女子が不完全な排泄に悩まされなかったとすれば、婦人科医というものも進化しなかっ たに相違ない」(王立医学協会におけるロンドンのガイ病院外科医、アーバスノットレーン氏の講演内容の一節)。さらにもう一つご紹介すると、「精神病の原 因における近代の研究は、次の事実を明らかにしている。すなわち、少なからざる場合において、精神錯乱症は、格別におかされやすい神経系統に対して腸毒素 の働く結果である。便秘と中毒症は不眠症と精神抑圧を誘致し、精神の均等も、時ならずして破壊されるのである。早発性痴呆症は、少なくともある場合にお いては、慢性腸中毒症の結果であることが明確に示されている。悪臭ある糞便と便秘とは常に見られるところである」ジョン・ハーヴェイ・ケロッグ博士「新栄 養学」。これらの原因を紐解くように、ロンドンのセント・バーソロミュー病院のブンラントン氏の言葉も続けたい。「調理法が一般的に普及し、その結果、腸 を機械的に刺激すべき、食物の硬い部分が柔らかにされて、その刺激力を奪われるという事実は、腸の運動をますますだらけさせる傾きがある。したがって文化 人は便秘に悩まされる傾向がはなはだ著しいのである。英国国民の半数は、腸の運動を多少とも助成すべき必要を感じているものといえようと思う。それには、 摂取する食物の中に、多少とも不消化な食物を加え、もって食物の全部が吸収されずに腸を通過して排泄されるようにすれば良いであろう」と。
すべて上記の内容は、今から80年以上も前に出版された故西勝造氏の書籍から引用させていただいたものである。著作集として第12巻がまとめられてい る。これらはその中の第7巻「便秘と宿便」にある。近代設備もない80年以上も前に、腸が万病の元であると警告した医学者や人物が沢山いたのだ。医学は進 歩しているというが、果たしてそうなのか疑問に思いはしないか。ましてや当時、世界の医学者が、腸に注目している中で、一体わが国ではこの問題に、どう対 処
していたのだろうか。以前取り上げた脚気論争が、奇しくもこの時代に近い。陸軍が兵食として白米を採用した結果、多くの軍人が脚気で苦しんだ。そのため経 験的に脚気に効果があるとされた麦飯に変えようとしたが、医学界の主流を占めたドイツ医学が、脚気伝染病説だったため、否定され多くの犠牲者を出すに至っ た。否定した中心人物が有名な森鴎外である。結果の是非ではなく、広い視野で情報を収集していれば、選択の余地はもっと広まったことだろう。故西勝造氏 は、その後西医学として、現代医学と真っ向から対決し、そしてもう一人、故桜沢如一氏は無双原理マクロビオティックを提唱し、食物と健康の関係を世界に広 めた。この2人の食養家が、腸の重要性を解いたことは言うまでもない。しかし、それを見通すこと2000年前にギリシャの医師ヒポクラテスは「まず、腸を きれいにせよ」と、語ったという。
万病の原因が、今も昔も腸にあるということを痛切に感じるひと言である。
参考:西勝造著作集 全12巻中の第7巻「便秘と宿便」たにぐち書店