その後の生き方
2003年6月1日
90年代、派手なルックスで売り出し、通称ヴィジュアル系のはしりとも言われたロックバンド“X-Japan”。多分、このグループの名前から、元メンバーだったギタリストのhideの事故死や、最近では、Yoshikiが愛知万博の公式イメージソングをプロデュースするなどのニュース、はたまたキンキンの逆立った髪の毛にお化けメイクを思い出した方など、さまざまな記憶が頭の片隅を横切ったと思います。私の場合、意外にも、たった一度だけ偶然見ていたテレビ番組(ミュージックフェアー)で、岩崎宏美と出演していた元ボーカルのToshiを鮮明に思い出します。ハードロックと岩崎宏美では、接点がないのではと思いきや、彼の澄んだ歌声を聴いて描いていた想像は完全に裏切られました。
Toshiは、97年にX-Japanを脱退して99年からソロ活動で全国47都道府県をまわり、今年で3000ヶ所を超えるミニライブやコンサートをしているそうです。先月のこと、これまた偶然に、名古屋でライブが行われるということで、運良く参加することができました。
派手なロックバンド時代とは打って変わって、ラフなシャツ姿は着飾ることもなく、ピアノやギターを弾きながら静かに語りかけてくるような歌声は、先のテレビの映像と重なり、威圧的な張り詰めたものなど微塵も感じられませんでした。
劣等感のかたまりだった少年時代から、人を見返すためにスターを目指し、髪を逆立てて虚勢を張り、地位や名声、圧倒的な人気を得ては見たものの、それとは裏腹に、空しくもがいている自分の心を押し殺しながら、うまくいっているふりや幸せなふりををする演技に疲れ果て、自殺を考えるほど苦しかった当時の心境や、その状態から一枚のCDが救ってくれた話しなどを間に時折織り交ぜながら、あっという間に時間は過ぎました。
他人の顔色や評価ではなく、ありのままの自分を受け入れて、その心境を歌で表すスタイルが自分を癒し、また、同じ境遇の方へのメッセージになればと語った彼のその姿を、今日も全国のどこかで見ることでしょう。