葉っぱ 奇跡の詩人

2002年8月1日

今年の4月に放映されたNHKスペシャル「奇跡の詩人」。その反響が新聞や雑誌で目についたことや、スタッフからの薦めもあって、著書「ひとが否定されないルール」を読む機会を得た。誕生直後の手術の影響で脳障害のハンディキャップを持ち、一日の大半をリハビリに費やしている11歳の日木流奈君の詩集やエッセーが大人達の心を引き付けているという。 新聞や雑誌の一部に批判的なコメントが多かったので、このギャップがなぜなのかという興味もあった。しかし本を読み進めていく中で、そのコメントが根拠のない批判であることがわかったが、それ以上にドーマン法という言葉に久しぶりに出会ったことに驚いた。私がドーマン氏を知ったのは、落馬して植物人間になった競馬の福永騎手が奇跡的に、わずかであるが歩行能力や言葉を回復させたことを、本かテレビで見たことがきっかけだった。その時博士が、福永騎手がかすかな光に反応することで回復を確信したと語ったコメントを今でも覚えている。
彼は著書の中でも「脳の成長のプロセスを速めるには、脳の成長が秩序だったものであることを認識したうえで、視覚、聴覚、触覚の刺激を十分に与えることが重要であり、このような刺激の頻度、強度、継続度を増やしていくことによって脳はより速く成長していく」そして「また、身体を十分に動かせるような環境や、言語の発達や手の機能の発達のための理想的な環境を作り、その環境を十分に利用できるような最大限の機会を与えることによって、これらの能力はさらに向上する」と語っている。
福永騎手の場合、ドーマン博士は、胎児が獲得・発達させていく機能の順次性に従って訓練をした。それを長い時間をかけて根気良く続けた結果が奇跡を生み出したといえる。
流奈君も同様に両親の献身的な努力と厳しいリハビリに根気よく立ち向かいながら、ドーマン法のプログラムにより、単語カードを約3000枚、二語文、三語文カードも約3000枚、親たちが作った手作り本はなんと約1000冊、そして、百科事典的知識を教わるための“ビッツカード”といったものが、1万枚にのぼるという。その溢れんばかりの愛情が、流奈くんに文字盤を指し示すことで多くのメッセージを発信していると同時に、私たちにも未知の可能性を示してくれているようにも思える。