葉っぱ 節目

2026年2月1日

 大相撲と言えば、私の世代にとって真っ先に頭に浮かぶのは、やはり北の湖と輪島の両横綱です。まだ小学生だった頃、毎日のようにテレビの前に座り込んで、輪島の取組に釘付けになっていました。あの独特の四つ相撲と、土俵際での粘り強い粘り腰、そして決まるときの豪快げ技が格好良かったのでし
ょう。北の湖があまりにも強すぎて、憎らしいほど完璧だったからこそ、逆に輪島を応援したくなったのかもしれません。まさに「輪湖(りんこ)時代」と呼ばれる昭和50年代の角界を、二人がかりで牽引していた時代でした。そんな中、千代の富士が横綱の北の湖を破って初優勝を決めた瞬間の視聴率は、65、3%という驚異的な数字を叩き出したそうです(平均視聴率も52%超えで歴代トップクラス)。全国の家庭で、誰もが息を呑んでテレビにかじりついていた光景が目に浮かびます。
 あの時代の大相撲人気は、まさに異常とも言えるほどで、力士たちはまさに国民的スター。街を歩けば子供からお年寄りまでが力士の名前を口にし、相撲番付が新聞の一面を飾ることも珍しくなかったのです。その後世代交代の波が押し寄せ、千代の富士の全盛期が訪れます。ウルフの異名で呼ばれる筋肉質の体躯と、圧倒的なパワーで土俵を支配した時代。でも、やがて貴乃花に破られ、引退。そして若貴兄弟の登場で、相撲人気はさらに爆発的なヒートアップを見せました。兄弟揃っての活躍で女性ファン層の急増、メディアの過熱報道と、まさに空前のブームでした。しかし、そんな熱狂が逆に相撲界を歪めてしまった側面もあったのかもしれません。八百長疑惑が表面化し、ついには国技でありながら本場
所中止という前代未聞の事態にまで追い込まれました。信頼が揺らぎ、ファンが離れる危機もありました。その後、朝青龍や白鵬らモンゴル勢が相撲界を席巻する時代が到来。2003年に貴乃花が引退して以降、日本人横綱が不在の期間は2017年まで長く続きました。その空白の時代には、暴力問題やいじめ疑惑、コロナ禍による無観客開催や場所中止など、さまざまな試練が相撲界を襲いました。それでも、協会と力士たちは一つひとつ問題を乗り越え、再び大相撲の人気を沸騰させてきています。今の相撲界を支える立役者は、まず日本人横綱の復活でしょう。そして、平幕力士たちの大幅な底上げです。かつては上位陣の独壇場だった場所が、今は誰が優勝してもおかしくない混戦模様。実力派が次々と番狂わせを演じ、土俵を熱く盛り上げています。そして、何と言っても象徴的な存在が、ウクライナ出身の安青錦(あおにしき)です。令和5年9月場所で初土俵を踏んで以来、驚異的なスピード出世。初土俵から所要14場所での大関昇進は史上最速記録で、21歳8ヶ月での快挙も史上4位の年少記録です。さらに、昨年十一月の九州場所では初優勝を飾り、大関昇進を確定。戦禍のウクライナを離れ、母国侵攻を機に日本へやってきた21歳の青年は、レスリング経験も活かした足腰の強さと、ひたむきな稽古で土俵を駆け上がりました。
 ウクライナで相撲が盛んな背景には、昭和の大横綱・大鵬の父親がウクライナ出身だったという歴史的な縁もあります。そのルーツが遠くウクライナに繋がっていたとは、まさに運命の巡り合わせで、しかも柔道やレスリングなどの格闘技が国民性に根付いた国で、アマチュア相撲も強豪国として育っていたのだそうです。安青錦の登場は、そんな歴史の糸を再び繋いだ象徴とも言えるでしょう。まさに相撲界は今、下剋上の時代。横綱ですら油断できない、誰でも頂点を狙える混沌とした面白さが満載です。下からの猛烈な突き上げが、これからも土俵をますます面白くさせていくでしょう。
 そんな大相撲の熱狂と並行して、政局もいよいよ大混迷の様相を呈してきました。来る衆議院選挙は一体どうなるのか。こちらも、既存の勢力に対する下からの突き上げが激しく、政治家たちが右往左往しているように見えます。相撲と同じく、国民が主役になる選挙。そんな予感が漂っています。