今年もはや稲刈り
2024年10月3日
令和の米騒動は、ついこの前のことでした。スーパーの棚からお米がなくなったことと、メディアが騒ぎ立てることで、主食のコメがなくなるとパニック状態に陥りました。当店でも新米への切り替え時期の約10日くらい、お米が入りませんでした。新米の出荷が始まり、今ではあのパニックはなんだったのか。新米が店頭に並ぶわけですから当然の日常に戻ったわけです。しかし、大幅にお米の価格だけが上がりました。米騒動の原因は、円安による海外からの観光客のお米の需要増や、小麦の価格上昇もあって、お米に需要が集中する一方で、猛暑によるコメの供給量の減少が重なったためらしいですが、問題は、政府としていまだに減反政策を続けていることが大きな原因です。2018年に減反廃止とされたものの、生産量の調整をいまも続けています。その結果、生産力そのものが、年々低下している現状です。このままで良いのでしょうか?_
JA農協と農林水産省の大罪を説く山下 一仁研究主幹は、「減反は水田面積の4割に及ぶ。減反は生産を抑える政策で、コメの面積当たり収量(単収)を増加させる品種改良は国や都道府県の研究者にとってタブーとなった。単収とは生産性に他ならない。減反開始時には日本と同じ水準だった米カリフォルニアのコメ単収は、今は日本の1.6倍。情けないことに、1960年ごろは日本の半分しかなかった中国にも追い抜かれてしまった。」と語ってます。
さらに、「なぜ、農林水産省は余裕のない生産を行わせるのだろうか? それは、食料の需要と供給の特性と関係がある。胃袋は一定なので、毎日の消費量に限界がある。テレビの価格が半分になると、もう1台買おうという気になるかもしれないが、コメの値段が高くても低くても消費量はそれほど変わらない。消費量が大きく動かないので、キャベツの生産が増え、それを市場でさばこうとすると、価格を大幅に下げなければならない。「豊作貧乏」である。逆に、長雨などで不作になると、どうしても一定量は食べなければならないので、価格は高騰し、売上高は増加する。」
価格の高騰を待ってるかのようなJA、農水省、政治家に生産者と消費者が翻弄されてきたかがよく分かる内容です。世界が混沌として、食うか食われるかの今にしてなお、こういうポンコツな役人や官僚、政治家が闊歩している我が国は、一体どうなっていくのでしょう。お金に狂っている人たちは、尻に火がついていても分からないのです。
さて、一年の半分にあたる6カ月の期間で、畔の補修から始まり、苗づくり、田植え、稲刈り、脱穀、籾摺りしてようやく玄米になります。いよいよカウントダウンとなりました。今年は、立派なイセヒカリの苗を育てることができましたので、今まで以上に期待が高まりました。田植えまでは順調でしたが、その後、山から流れてくる大量の水草の発生で、苗の周りに水草の塊ができて水流が偏り、豊富な水が必要な一部の苗にダメージを与えてしまったようでした。来年からの課題がまた一つ増えました。そして今年一番の不思議なことが田んぼで起きました。イセヒカリは晩生のため収穫時期は、遅めになるので、毎年の出穂時期はきまってお盆中だったのですが、なぜか私の育てた苗だけが、7月の後半から出穂をし始め、お盆の頃には黄色く色づきはじめていたのです。そのため、出穂中は自家受粉をするので田んぼに入れず、結果として取り切れないくらい雑草のヒエや、ヒレタゴボウ、タガラシなどが蔓延ってしまいました。農薬や化学肥料を使わずに自然相手というのは本当に難しいと感じます。でも、それだからこそ課題をひとつひとつ克服してご先祖様は、立派な種を後世に伝えてくださった訳ですから、今の私達も、それを確実に伝えていく使命があるはずです。玄米になるまでもうあと少し。もうひと踏ん張り。
参考:令和のコメ騒動、根本的な原因を問う 国民への奉仕を忘れた農林水産省
時事通信社『金融財政ビジネス』(2024年9月9日発行)に掲載