ウォータークライシス
2015年12月1日
年の瀬に、今から10年前に書いたお便りを掲載させていただこうと思う。下の新聞記事は、その8年前、1997年の中日新聞。この記事は正確に18年経った現在、そしてこれからの行方を見事に言い当てている。世の中が物騒になっているのも深刻な水飢饉が理由の一つである。何不自由なく生活できるわが国は、水道を捻ればいくらでもその恩恵を得られる。その幸いが災いし、この大変な時代になってもこの恩恵に対して敬意を払うことを忘れてしまっている。10年後、この記事の言う通りならば、世界人口の2/3が水が飲めなくなる。最終戦争を予感させるものである。
日本に生まれて、豊かである恩恵を噛みしめて、私たち一人一人は何をすべきか。真剣に考えるべき時だと思う。
ウォータークライシス(ヘルシングあい便り2005年10月号)
気になってスクラップしておいた新聞の記事がある。8年も前のものだ。興味を引いたのは21世紀は水不足の世紀という言葉だった。四季を通じてまんべんなく雨が降るわが国にいてはピンと来ないことなのだが右下の大幅に伸びる農業用水のグラフは未来への不安をかきたてた。人口爆発といわれた20世紀。食糧危機が叫ばれる中のささやかな記事は、1997年6月に国連の持続可能開発委員会が国連環境特別総会向けにまとめられたものだった。それが今、まさに現実のものになろうとしている。
残暑が厳しい8月の終わり、NHKの「ウォーター・クライシス:2回シリーズ」の2週に渡った特集
を見た。石油獲得闘争よりも熾烈であると言われているのが生命としての人間に必須の資源、水をめぐる闘争であり、21世紀は水戦争の時代とも言われている。この強烈な文句は、その内容を見るにつけ大げさな表現ではないことが伝わってくる。
はっとして数年前のこの新聞記事のことを思い出して部屋中を探し回った。世界の用途別淡水割合は、生活用水10%、工業用水20%、農業用水70%と農業用水が断然多い。その理由は20世紀の百年間に、人口は4倍に増加、農業用水使用量は6倍にも増加したことが原因らしい。特に深刻なのが世界の食料供給源になっているアメリカ中部のオガララ帯水層の地下水の低下。数千年かけて蓄えられてきた地下水がセンターピボット方式により無計画にくみ上げられ、あと20年ほどで枯渇する地点も出始めるという。膨大な地下水を使うのは、肉食牛の飼料とうもろこしの増産である。
とうもろこしは小麦の3倍水を必要するが収入も3倍になるからだ。
食パンの原料の小麦を1キロ作るのには、2トンの水で済むのに、牛肉を1キロ作るのにはその10倍の20トンもの水が使われてしまう。
年間降水量2000mlにも及ぶわが国が、500ml以下の他の国から食糧を大量に輸入している。
豊富な水に恵まれながら食料自給率40%満たず、小麦やとうもろこしの大半をアメリカから輸入しているわが国は真っ先に影響を受けることになるだろう。
8年前のこの記事は、人類の終焉を予測しているかのように新しい。
覆水盆に返らずとならぬよう願うばかりだ。