葉っぱ 償い

2002年3月1日

夕刊の新聞記事にふと目が止まった。それは東京の三軒茶屋駅で起こった暴行事件判決公判の事。この事件は昨年の4月ごろに、三軒茶駅で当時18歳の少年らが男性銀行員と口論となり、殴って死なせたとして傷害致死罪に問われ、それぞれ3年以上5年以下の不定期刑を言い渡されたものだった。「わたしの人生をかけて償いをする」「遺族の心に大きな傷を与え申し訳ない」などと最終意見陳述で謝罪した少年らに対して山室裁判長は、判決文を読み上げた直後「唐突かもしれないが・・」と切り出し「君たちはさだまさしの「償い」という歌を知っているか」と問い、「たぶん知らないと思うが、君たちの法廷での言葉がなぜ心を打たないか、この歌を聴けば分かるだろう」と論じたそうだ。法定といえば仮面でもかぶって論じられるような場所と思っていたが、この血が通った言葉の投げかけに、心の癒しとなる方が多くいるに違いない。 判決の内容以上に伝えたいことが、一人一人の心に響く言葉として「癒し」となる日を思い、「償い」の歌詞全文を掲載させていただきます。

「償い」  作詩・作曲:さだまさし
月末になるとゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに
必ず横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった
仲間はそんな彼をみてみんな貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いで嘲笑っても ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり
僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ
たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜横断歩道の人影にブレーキが間にあわなかった
彼はその日とても疲れてた
人殺しあんたを許さないと彼をののしった
被害者の奥さんの涙の足元で彼はひたすら大声で泣き乍ら
ただ頭を床にこすりつけるだけだった
それから彼は人が変わった 何もかも忘れて働いて働いて
償いきれるはずもないがせめてもと 毎月あの人に仕送りをしている
今日ゆうちゃんが僕の部屋へ泣き乍ら走り込んで来た
しゃくりあげ乍ら彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年目に初めて
あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り
「ありがとうあなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました
だからどうぞ送金はやめて下さいあなたの文字を見る度に
主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど
それよりどうかもうあなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
手紙の中身はどうでもよかった
それよりも償いきれるはずもないあの人から
返事が来たのがありがたくて ありがたくて ありがたくて ありがたくて ありがたくて
神様って思わず僕は叫んでいた 彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ通うはずの やさしい人を許してくれてありがとう
人間って哀しいね だってみんなやさしい
それが傷つけあってかばいあって 何だかもらい泣きの涙が
とまらなくて とまらなくて とまらなくて とまらなくて   
参考記事:中日新聞2月22日夕刊