何を食べるべきか
2001年4月1日
自宅のすぐそばに牛舎がある。ちょうど家の草むらに、ある時期になると牛糞をまいていたので、夏場は、その芳香剤?が家中に充満して、つい食事中に箸がとまることもあった。小学校の通学途中、子どもの目線だから像くらいに感じただろうと思う牛をよく見に行った。いつ見にいってわらばかり食べてるので、その記憶しかない。今では住宅が建ち並んで当事の面影はなくなった。牛もいつの間にかいなくなったが、牛舎は今も変わらぬままにある。
草を食べて、たんぱく質に変える家畜動物は、人間にとって大切なたんぱく源。そのたんぱく源の中でも肉食は、経済成長とともに比例して伸びる傾向になるらしい。わが国においても40年前の何と5倍以上増え続けている。しかし、生産性の向上とともに蔓延する災いにも目が離せない。
偶蹄類(ひずめの形が割れている牛、豚、めん羊などの動物)の急性伝染病である口蹄疫。名前の如く、口、蹄、乳房の皮膚や粘膜に水疱ができ、びらん、発熱、歩行障害などが主な症状で、その口や、蹄などにできた水疱が破裂することにより、空気感染で周りの家畜にものすごい速さで広がっていくそうだ。世界中で最も恐れられている口蹄疫ウイルス伝染病が、イギリスで発症してEU全土に広がろうとしてる。
思い出されるのが、もう5年も前になる狂牛病。同じくイギリスで発症して世界中で大騒ぎになった事件だ。その原因は、プリオンと呼ばれる特殊なたんぱくが病原体といわれているだけで、それ以外には明らかにされていない。しかし、草食動物である牛に、羊の死体をえさに与えていたことが原因といわれている。ご存知の通り、牛は反芻動物のため、たんぱく質を多量に取る必要がなく、一度飲み込んだ食物を口の中に戻しては細かくすりつぶし、また飲み込むことを繰り返して4つの胃袋で消化しにくい草を消化してたんぱく質を作り出すという複雑な作業をあの大きな体の中で作り上げているのだ。
アグリビジネスといわれる今日、いつしか家畜の飼育もシステム化され、えさは3倍早く体重がつく穀物へと移り変わり、放牧をする必要がなくなり、建物での工場生産のようなものに姿を変えようとしている。生産性重視のために、家畜の健康など論外なのだ。
すべては合理性の名のもとで行われている。森林は放牧地や農耕地にかわり、過剰な地下水のくみあげで、世界のいたるところで砂漠化が進んでいる。
家畜の食糧のため、人間の食糧が奪われる日が来るのもそう遠くないだろう。