ヘルシングあい便り

眠りにつく迄に2019.12.01

 先月のこと、新聞を読んでいたら、最近出版された書籍の紹介がされていました。膵臓ガンで余命宣告された母が永遠の眠りにつくまでを家族の苦悩と葛藤を織り交ぜたエッセイという内容に、おもわず手に入れたくなりました。
 それから二週間ほど経って、注文したことも忘れかけた頃にその本は届きました。どちらかというと軽快な調子の文章スタイルで、どんどん読み進めていける内容でしたが、突然、余命宣告を受けてからの風景は、私がそうだったように、どこか現実離れしたところに自分がいて、平静を装った一日がまた始まるような重苦しい空気が伝わってきて、自分自身の当時のことが目の前に浮かんでくるようでした。
 作者の家族は、現代医学を受け入れ、がん治療と自宅療養という選択肢をとっていました。そしてデイケアを時折取り入れながらも、なるべく家族で四六時中面倒を診るというスタイルです。それが当人にとって一番いい方法だとつくづく思いました。しかし一方で、私の家族間でもありましたが、なんとも言えない重圧で起こってしまう衝突や喧嘩。これがとても病人には負担になります。なぜ回避するため、デイケアを取り入れながら衝突しないようできなかったかを悔いています。突然の非日常の状態が続くと、そのストレスたるや大変なものです。その人数が増えれば増えるほど、よほど仲良い関係でないと介護は無理でしょう。そのため患者は、いつしか病院で面倒を見てもらうという他人事にな
ってしまったのだろうと思います。
 がん治療のために起こる痛みの壮絶さは、当人が生きている証でもありますが、それと引き換えに、介護する側の神経を衰弱させていくことになります。それでも、平静で介護しなくてはなりません。これが現実の問題として起きてくることをこの作者は教えてくれました。
 私の母も、今思うと、病魔からの痛みに、我慢強く耐えていたのかもしれませんが、朝から晩までの自然療法やコウケントーの効果か、痛みを訴えたり、悲痛な表情を見せたことがありませんでした。あるといえば、毎日夜中に体の置き場所がないと言って、何度も体を起こしたり、寝かしたりしたことがあったくらいで、この本を読んで、介護のうちに入らないくらいと感じた次第です。
 母が亡くなって間もなく、膵臓がんの末期の方が来店されました。病院では治療の施しようがないということで、ビワ温灸に命を託したそうです。そうしたところ、余命を遥かに超えてご主人とご一緒に、温灸のもぐさを買いに来れるくらい元気なので驚きました。
答えは一つではないということですね。
 ますます現代病が蔓延する今日。誰しもが、明日その主人公にならないとは言えません。非日常にならないためにも日頃の自分自身へのケアが必要です。
 自分のために、そして周りのために、一度そうなったときのことを考えてみる機会が必要ではないでしょうか。この書籍を皆さまも手にとってご一読をおすすめします。

眠りにつく迄に 文芸社 此木田かおる著

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