ヘルシングあい便り

笑顔がもどった日2014.07.01

 もう2年以上前になる。受話器の向こうからはいつもと違うTさんの弱々しい声が聞こえてきた。どうしたことか尋ねると、長年心臓を患っているという。それが最近酷くなり、外出できないからこちらに買いに行くこともできないという。もう先が短いから仕方ないと言って半ばあきらめ口調の声が寂しく耳に響いた。Tさんは西式健康法をしていたはず。西式体操の中でも毛管運動は、第2の心臓と言われる毛細管の働きを活発にさせるため、心臓の負担が軽減される。なのにどうして悪化したのか腑に落ちなかったので聞いてみると、最近は足をあげるのもつらいからできないということだった。 毛管運動とは、寝た状態で手足を真っ直ぐ床と垂直にあげてその手足を振動させる運動で、最低1分以上行うと効果が高い。血液が体を循環するのにそれくらいかかるためで2分くらいできると最高である。この間、末端の毛細血管は血液が来ないから断食状態になる。そこにあげていた手足を下ろすと急速に血液が送り込まれて手足の隅ずみまで、栄養と酸素が運ばれるため病気などの治癒につながる。この良い例が、指先に包丁などで深い切り傷をして出血した場合、その患部を止血しながら心臓より高い位置までその手を伸ばしてブルブル数分振っていると、自然に止血して患部の治りも早い。これほど効果のある運動はないだろう。ただし、足をあげ続けていることは健康な人が行っても息があがるから、体調の悪い人ができないのも無理はない。そこでお伝えしたのが、足をなるべく高い位置で壁にもたれかけさせて行う方法で、これだったら手を伸ばしているだけで、足に負担がかからない。気持ちさえあればだれでも出来るはずである。
 しばらく経ったある日、Tさんが買い物に来られた。あれからちゃんと続けているという。外に出られなかった人が出れるようになっただけでも大きな変化だが、ご本人は納得出来ない様子だった。しっかりやっているのに体が冴えないのが不満らしかった。西式の体操には4つの動きがある。その一つが先程ご紹介した毛管運動で、それ以外に金魚運動、合掌合蹠、背腹運動の3つがある。それをしっかりやっているのか確認したところ、背腹運動だけは難しくてやれてないということだった。これを説明しているとそれだけで紙面がなくなるために簡単に説明すると、上半身を左右にメトロノームのように振りながら、同時にお腹を前方に押し出す運動のことで、脊柱の歪みを取り、背骨の左右の動きによって背骨の左右に通っている交感神経の幹が刺激されて体液が酸性へ。腹の出し入れによって腹部の太陽神経叢という副交感神経が刺激され体液がアルカリ性へ、それを同時にすることによって中性状態となり、自律神経のバランスが整えられる運動である。それをやれば必ずもっと良くなりますからと言ったのがいつのことだっただろうか覚えがない。
 先月のこと、そのTさんが久しぶりに買い物に来られた。顔には笑顔が戻っていた。あれから背腹運動もしっかりやってますと元気な声を聞いた時にはこちらが感無量となった。体調が最悪だったときには遺言まで書いていたというからビックリしたが、それも今は笑い話しとなった。
 人間いつまでも健やかでいたいものである。それには日頃から小さな努力を惜しまないことを、改めて西式健康法を通して教えられた気がした。

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