ヘルシングあい便り

遊びが語る秘話2009.09.01

長雨がようやくおさまったと思ったらもう秋の空である。せみの声は、コオロギやキリギリスなどの涼しい音色に変わろうとしている。そしてもう一つ大きく変 わっただろうと思うのは、選挙結果である。民主党の圧倒的な勝利で終わっていることだろう。小泉劇場が一転、次の選挙では民主党の独壇場になろうとはだれ が予想しただろう。これは、いかにこの数年間の国民のストレスが大きかったことを表していないだろうか。何でもそうである。長年付き合いが続くとどうして も馴れ合いになるのは当然で、だから官僚支配という言葉ができるのだろう。これから選挙ごとに政党が変わったほうが緊張感があって返って良いのかもしれ ない。いずれにせよ、この便りが届くころに判明している結果が楽しみである。
ある一冊の本をOさんからいただいた。日本の主食である米のルーツを著したものである。一読して感じたのは、知らしめず、寄らしめよ。という言葉がある ように、何も知らされていなかったことの悲痛さである。まだ小学生のころ、脚気の意味も知らず、そのテストと称して、いすに座った友人の片足のひざを空手 チョップして、その足が反射的にピョンと持ち上がるのを見て楽しんだことがある。まさかこの遊びが、何万人という死者を出した脚気という、当時の奇病とは 思いもしなかった。その本は語っている。米の歴史は脚気の歴史といっていいほど密接な関係で、白米まで搗いて食べれた一部の上流階級に起こったといわれる のが奈良時代だそうだ。足の神経が麻痺して歩行困難になり、意識障害、手当てが遅れると死に至るという。生活が向上し、硬い玄米を精米して白米を食べれる ようになればなるほど脚気は増え続け、その白米を採用した明治政府の軍隊に至っては次々に兵士が倒れるので静養のために田舎に帰したほどである。しかしそ こではまだ運良く玄米や雑穀が主食である。そうすると見る見る元気になるから驚いたことだろう。しばらくするとまた軍に復帰するのを繰り返したそうだ。そ の当時、まさか主食の米に原因があるとは思っていなかっただろうが、中には白米に麦を混ぜた麦飯の効用に着目してそれに踏み切り、かなりの成果をあげた師 団もあったため、食が原因で起こるという説が重要視される所まで行ったというが、政府擁護のもとでドイツ医学を取り入れていた東大医学部が、脚気細菌説を 唱え、まったくそれを受け入れなかったそうである。結局、あるはずもない細菌探しに奔走する中、日清戦争のときには何と戦死者の11倍もの死者を脚気で 失っているのだ。この悲惨な状況は、結局昭和になるまで引きづられていくことになる。このあたりの日本の事情は、今も変わらない風景ではないだろうか。人 の命より自分たちのメンツのほうが大事なのである。そんなゴミのようなメンツのために人名が失われ、何の反省や説明もないまま今日に至った証拠が、あの脚 気の遊びにあらわれている気がするのである。そうでなけれは、あれを遊びと今まで思えなかっただろう。
その後、脚気の有効成分が、玄米を精米した米糠の中から発見された。それがビタミンB1である。それとともに、この奇病は終息に向かい、細菌説もどこ吹 く風である。脚気の歴史を見ると日本の歴史が分かるとこの著者は語っているがその意味が良く分かる気がする。ぜひご一読いただきたい本である。
「見直せ!日本型食生活」 食物史研究家 鈴木猛夫

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