ヘルシングあい便り

鍛錬2005.12.01

先月末に不養生から風邪を引いてしまった。若いときは熱がカーッと上がって翌日にはケロッとしていたものだったが、近頃は熱がなかなか上がらない。そのため体の中ではウイルスをやっつけるのに持久戦となり、情けないほど治るのに時間がかかってしまう。寝つきが悪くなり、年々体のだるさは辛くなる一方で、風邪ウイルスの強力な軍隊を前に病院へ行ってワクチン一本という安易な思いに駆られる。しかしそれを払拭できるのは、以前にもご紹介したが、野口晴哉氏著の「風邪の効用」を読んだからだと思っている。風邪は治すべきものでなく経過するもの。風邪が体の掃除をするとともに、安全弁の働きをする。風邪をひいたあとはあたかも蛇が脱皮するような新鮮な体になると説くその本の内容に賛同するからだ。ただ、その経過にもっと注意を払って生きたいと思っている。西式健康法では症状即療法といわれるように、経過よく対処すれば、もっと自信が持てるはずだ。「風邪の効用」風邪がもたらす効用書としてお勧めしたい本である。
毎年この時期になるとインフルエンザの猛威が伝えられる。香港?型か、ソ連?型など、今年は一体何型のウイルスなのかと。しかし、今年はインフルエンザよりもそのワクチンとされるタミフルに話題が集中しているようだ。その薬の副作用ではないかと思われる異常行動による死者や乳児の突然死が報告されているからだ。私は勉強不足でこの薬の名前すら、最近になるまで知らなかった。インフルエンザそのものではなく、その治療薬で事故がおこる可能性があるという皮肉な現象が生まれている。私たちは毎年到来するこの厄介者にどう対処すればいいのだろうか。
母里啓子氏監修の「今年はどうする?インフルエンザ」という本を紀伊国屋で購入して読んでみた。母里氏(元国立公衆衛生院疫学部感染症室長)が語り手としてさまざまな疑問に答える対談形式になっているので、簡単で分かりやすい。しかも医師や医薬専門家の所見や対談内容も書かれている。参考までに気がついた点を列挙してみたい。
・まず、インフルエンザは、風邪を引き起こすウイルスの一種(60種類以上)であるということ。
・インフルエンザウイルスは変異するため、それまでの抗体で防げないのでワクチンは効かない。
・インフルエンザは潜伏期間が1~2日で、症状は4、5日で消える。インフルエンザ脳炎や脳症の主な
原因は解熱剤らしい。
・タミフルは小児には使い道はない。(小児の予防には承認されていない)
・前橋市の全市立小学校の出席状況を6年間にわたって調べ、さらに、それらのうちから五つの小学校を選び、600人の二年生から採血してインフルエンザウイルスの抗体検査を実施、二年生が卒業するまで行われ、ワクチンがインフルエンザの予防になっていないことが明らかになる。これが全学校での予防接種中止へと広まる。今も生きる「前橋レポート」と言われるらしい。
・今年のワクチン需要見込みは2175万本。予防接種中止から30万本まで落ち込んだ製造量が2000万本にまで急激に伸びた背景には、需要を喚起して供給するしくみがあると思われる。
以上「今年はどうする?インフルエンザ」より抜粋。
インフルエンザに罹ってもせいぜい我慢するのは4日程度だ。それに毎年決まって罹るわけではない。日常の鍛錬で、自律神経を活発にして脳の機能を向上させる温冷浴は大変有効だろう。(ただし重症の慢性疾患がある人(高血圧、心臓病、慢性腎不全など)・酔っているとき、貧血気味の方はご遠慮下さい)最近ずっとご無沙汰だったが、経過よく対処するためまた再開する決意に至った。免疫学では「体温が1度上昇すれば免疫活性は3倍以上になる」といわれている。この熱の作用で白血球の働きが非常に活発になり、バイキンやウイルスを退治する力が増すのだ。これからの季節、寒修行と思ってお試しになりませんか?

覆水盆に返らず2005.11.01

必ずといってもいいほど目を通すある雑誌のコーナーがある。メタルカラーの時代と題して山根一眞氏が連載するものだ。メタルカラーとは、事務職を意味する「ホワイトカラー(白い襟)」に対して、創造的工業技術者の呼称として「金属の襟・Metal Collar」の持ち主という意味あいを込めて命名したもの。高い技術力を支えるキーマンに光をあて、その技術が産み出されていく経緯を対談形式でまとめていく内容である。先月号の連載に興味深いことが取り上げられていた。
8月末に「カテゴリー5」という最大規模のハリケーン・カトリーナがニューオリンズ市を直撃、市の8割が浸水し死者も数多く出るなど壊滅的被害を出した災害は、いまだ復旧のメドも立たない。そんな自然災害の危険性と対策を、水資源機構の青山俊樹氏に尋ねるものだった。
驚いたことは、ニューオリンズ市の被害拡大の原因が、長年にわたる大規模な地盤沈下が原因だったことだ。石油や天然ガス、地下水の汲み上げでニューオリンズ市全体の約7割が、海抜0m地帯になってしまったため、ひとたび水が入るとなかなか引かないらしい。こんなことはニュースでは語られない情報だろう。さらに驚いたことは、このニューオリンズ市が46年前の伊勢湾台風と同じ状況だというのである。伊勢湾台風の被害拡大も主に、工業、農業用水のために地下水の汲み上げのための地盤沈下が原因だったことが、その後の精密な測量でわかったそうだ。大工業化のツケにより、都市部の地盤沈下はひどく、とりわけ名古屋周辺部はひどいようある。1978年にはほぼ止まったそうだが、沈下した地盤が元の高さに戻ることはないという。そういえば東海豪雨では、名古屋都市部はすぐに水に浸かってしまった。家にも帰れず、渋滞する車の中で水がひくのを祈った記憶が鮮明に蘇る。これが、今回のような巨大台風だったらどうなっただろうか。地球温暖化による異常気象で干ばつが多くおこり、渇水が続けば地下水を汲み上げるしかない。地盤が下がり、そこへ台風や大雨が押し寄せ大洪水になる悪循環。まさに「ウォーター・クライシス」が、現実に目の前に迫ってくるようだ。「氾濫区域」に居住している人口は、カトリーナで大きな被害を被ったアメリカでさえ7%にすぎないが、わが国では50%に達している。対岸の火事と安閑とせず、いつこのようなことが起こってもおかしくないという備えが必要だろう。特に治水、防災対策などの恒久的な建設が必要になる。そういった予算であれば大いに賛成だが、声が届かぬと、無駄なものとして先行きのことまで省きたがるのが世の常である。こちら側も一方的に反対しがちな公共工事やダムなどの治水工事だが、確かな情報を得ることで、危機意識が生まれ、関心は高まるもの。覆水盆に返らずで終わらぬよう、こぼれて失ったものを現代の智慧によって、違う形にせよ取り戻す努力が必要とされるのは間違いない。憂いがないように。

ウォータークライシス2005.10.01

気になってスクラップしておいた新聞の記事がある。8年も前のものだ。興味を引いたのは21世紀は水不足の世紀という言葉だった。四季を通じてまんべんなく雨が降るわが国にいてはピンと来ないことなのだが右下の大幅に伸びる農業用水のグラフは未来への不安をかきたてた。人口爆発といわれた20世紀。食糧危機が叫ばれる中のささやかな記事は、1997年6月に国連の持続可能開発委員会が国連環境特別総会向けにまとめられたものだった。それが今、まさに現実のものになろうとしている。
残暑が厳しい8月の終わり、NHKの「ウォーター・クライシス:2回シリーズ」の2週に渡った特集を見た。石油獲得闘争よりも熾烈であると言われているのが生命としての人間に必須の資源、水をめぐる闘争であり、21世紀は水戦争の時代とも言われている。この強烈な文句は、その内容を見るにつけ大げさな表現ではないことが伝わってくる。はっとしてこの新聞記事のことを思い出して部屋を探し回った。世界の用途別淡水割合は、生活用水10%、工業用水20%、農業用水70%と農業用水が断然多い。その理由は20世紀の100年間に、人口は4倍に増加、農業用水使用量は6倍にも増加したことが原因らしい。特に深刻なのが世界の食料供給源になっているアメリカ中部のオガララ帯水層の地下水の低下。数千年かけて蓄えられてきた地下水がセンターピボット方式により無計画にくみ上げられ、あと20年ほどで枯渇する地点も出始めるという。膨大な地下水を使うのは、肉食牛の飼料とうもろこしの増産。とうもろこしは小麦の3倍水を必要するが収入も3倍になるからだ。食パンの原料の小麦を1キロ作るのには、2トンの水で済むのに、牛肉を1キロ作るのにはその10倍20トンもの水が使われてしまう。年間降水量2000ミリにも及ぶ日本が、500ミリ以下の他の国から食糧を大量輸入している。豊富な水に恵まれながら食料自給率40%満たず、小麦やとうもろこしの大半をアメリカから輸入しているわが国は、真っ先に影響を受けることになるだろう。8年前のこの記事は、着実に進むわが国はおろか人類の終焉を予測しているかのように新しい。覆水盆に返らずとならぬよう願うばかりか

脳脊髄液減少症2005.09.01

原因が分からず体調不良を訴える人は私たちの周りに少なからずいると思う。先日、お客様から「脳脊髄液減少症」というはじめて耳にする病名を教えられた。長い間体調不良で苦しみ、入院や検査等繰り返したが、根本原因が分からず最近になってようやくこの病名にたどり着いたという。医療の中での認知度が低いため、この病気の検査や治療を受けるのは困難らしい。
その「脳脊髄液減少症」とは・・“交通事故やスポーツなどによる衝撃で脳をおおう硬膜に穴があくと、脳と脊髄(せきずい)の周囲を循環している脳脊髄液が漏れて脳の位置が下がり、頭痛やめまい、吐き気などの症状が現れるもの。髄液を採取した際に発症する「低髄液圧症候群」が知られていたが、むち打ちや転倒の衝撃でも、髄液が漏出すると主張されるようになった。国内で患者は10万人以上いるとの見方がある。患者本人の血液を注射し、血液凝固で髄液が漏れた場所をふさぐ「ブラッドパッチ療法」が有効とされる。現在のところ厚生労働省は保険適用を認めていないが、交通事故などの被害者らによって、むち打ちや転倒時の衝撃でも髄液が漏出することがあると主張され始めている。”(毎日新聞2005年8 月27日) この病気の症状は、長年にわたり、頭痛、首や背中の痛み、腰痛、めまい、吐き気、視力低下、耳鳴り、思考力低下、うつ症状、睡眠障害、全身倦怠感、慢性疲労などの様々な症状が複合的に現れるというから大変である。しかも普通の病院で検査をしても原因が分かりにくいために病状が分からぬまま、精神科を訪れ、山ほどの抗うつ剤を処方されるはめになるやも知れない。
この病名に関しての現状を少しでも知りたいと思い、脳神経外科が専門で、臨床と研究に20年余り従事した経験を持つ東名ふじもりクリニックの院長である永谷先生にお尋ねした。
「この症状は、交通事故などの外傷、脳、脊髄の手術後、腰椎穿刺(髄液を採取して、中の白血球を調べることにより、中枢神経系への腫瘍の進展の有無、感染症の有無などを調べる)などの検査後におこることが多いとされていますが、中には原因、誘因なく(特発性といいます)、横になってテレビを見ていたときとか、咳やいきみとか、脱水状態、過呼吸でもおこるという文献上の報告があります。立位(人間が立った状態)で悪化、臥位(うつ伏せ)で改善する頭痛が特徴で、このような症状があればまずその他のうつ症状も含め、脳神経外科あるいは神経内科専門医の診察を受け、MRIで画像チェックも受けるべきです。MRIは国立・市立の大きな病院なら必ずありますし、そのような病院には専門医は常勤でいるはずです。」という返事を頂いた。大きな事故だけではなく、生活の中のちょっとしたことで起こる可能性があるようだ。
もし万一、このような症状で悩んでいたら、先生もご相談に乗って頂けるとのことなので心強い。交通事故のむち打ちが原因で長年苦しんでいる話もよく耳にする。頭の片隅にこの病名を残して頂き、何かあった時に思い出して頂きたいと思う。なお、「脳脊髄液減少症」の治療法であるブラッドパッチ療法は保険適用も認められていない上、検査、治療を受けることが出来る病院が不十分な現状だ。そのため改善の確立を要望する積極的な署名活動も行われている。当店も少しでも多くの署名をご協力させていただきたいと思っている。

内科、脳神経外科、神経内科
東名ふじもりクリニック
院長 永谷一彦先生 名古屋市名東区藤森2-237 TEL:052-773-1010
URL:www.tfclinic.com
※URLが変更となりました。

蝉が語る環境問題2005.08.01

先月の下旬、遅い夕食をとっていた時のこと、パタパタと時折する羽の音が気になって外を覗いて見ると、のら猫に追われて蝉が逃げ惑っていた。猫が早い動きで追いかけている。しかしそこに私の顔がひょっと覗いたせいか驚いて逃げていってしまった。もどりかけようとしたら何かが視界に入った。何だろうと思い、そこに焦点を合わせると、ダンボールの蓋のところにら見かけないものが引っ付いている。近づいてみると、ナント蝉が孵化したところだった。まだ、ぬけ殻にしっかりとぶら下がってる。白色の身体に淡く緑色をまとっていて、透明な羽が美しい。これは「シャンシャン」うるさく鳴くクマゼミだ。はじめて孵化した現場に遭遇して、しばらくじぃ~と見入ってしまった。子供のころは、両親の実家が長野だったので、夏休みの大半は長野。近くの山々へ昆虫を捕りに行った。木の枝についている蝉の抜け殻を見つけては孵化する瞬間が見たくて、畑で幼虫を捕まえようと蝉の穴を見つけては何度もトライした記憶がある。思うようにいかなかったが、今、偶然にせよこうして孵化の瞬間に遭遇することが出来たことを嬉しく思えた。
同時に一つの疑問が頭に浮かんだ。ここ数年、めっきりアブラゼミが減って、なぜクマゼミが増えたのかということだ。子供のころ見かけるのはアブラゼミばかりで、クマゼミを見つけようものなら、一目散に捕まえにいったものだった。ところが年々、その割合は大きく変化している。大きな疑問を解決しようとパソコンの前に向かった。そこで分かったことは意外なことも含むものだった。
アブラゼミのいる環境は林内で落ち葉があり、湿ったところを好むそうだ。一方、クマゼミのいる環境は地面に下草がほとんどなく、落ち葉の掃除も行き届いた乾燥した環境で、道路沿いの林縁部。亜熱帯から熱帯に生息する南方系の蝉なのだそうだ。私の中ではどちらかというと好まないアブラゼミは、実は、世界でも珍しい羽に色がついている蝉であって、しかも、自然環境を好むそうだ。昨年12月に大阪府がまとめた「セミの抜け殻調査」では、50年ほど前には大阪でほとんど見られなかったクマゼミが急増していることが分かった。小学生の集めた抜け殻約2万2000個のうち6割弱がクマゼミ。更に南方で見られるナガサキアゲハも1995年以降、近畿で見られるようになり、昆虫の分布域は北上を続けている。などなど多くの情報が公開されていた。それは気候そのものにも異変が起きていることを関連付けている。日本に上陸した台風の数は90年代に入って増え、昨年は史上最多の10個を記録。欧州やアジア、米国でも洪水や熱波に襲われた。生態系の異変や異常気象は、温暖化やヒートアイランド現象と結びついているのではないかとみられる。といったことが分かったのである。
夏の風物詩である蝉はとても身近な昆虫だ。それらの幼虫は約6年間もの間地中で暮らす。そしてやっと成虫になって私たちの前で鳴いているのがたった1週間。この儚さが、日本人の感性に訴えかけるのに十分な一生であるのかもしれない。松尾芭蕉の有名な俳句、「閑さや 岩にしみいる 蝉の声」にも十分著されているのではないだろうか。蛇足だが、芭蕉のこの蝉の声の正体を巡って斎藤茂吉らが大論争を繰り広げたそうだ。結局その正体は時期的にニイニイゼミだということで落ち着いたそうだが、そのニイニイゼミがいなくなったら芭蕉の名句の感動を味わうこともできなくなってしまう。という一文を垣間見た。環境の変化とともに、四季の変化も、私たちの心も様変わりしていくことを暗示するその言葉に、複雑な思いがしたのだった。

テンポラリーアビリティー2005.07.01

先月中旬のこと、ちょっとうれしいニュースがありました。私を含めスタッフ全員で2年ぶりに健康診断、とはいっても血液検査(過酸化脂質数を含めた)を、日頃親しくさせて頂いている恒川クリニックでさせていただいた時のことです。恒川先生は、ホリスティック医学の振興に尽力されていますので食事についても当然理解が深いのですが、一人一人のデータを見ながら「数値的に全く異常ないのだが、全員低コレステロールには驚きだなぁ。お店で玄米菜食毎日やってるの?。感心だなぁ」と、食事の影響が具体的に数値化されていることに目を丸くしながら私のほうを見たのです。(というのも先生とは以前に何度も酒席でご一緒させていただいたこともあり、本当にこいつはやっているのか?という疑心の目だったのでしょう)久しぶりにお会いしたこともあってか多方面に会話ははずんだのでした。
健康でいていただくために、安心、安全のものをご提供するとともに、食の提案として喫茶コーナーを始めて丸5年になりました。今では多くの方に、毎日のように足を運んでいただくようになりました。旬の野菜を中心としたメニュー作りは考えるスタッフの苦労も大変だと思うのですが、食べて頂いた方から美味しかったという声を聞くことで日々の力が沸いてくるといっています。食生活のちょっとした提案で、皆様の健康の一助となれば、こんなに嬉しいことはありません。
アメリカ発祥の言葉に、テンポラリーアビリティーという考え方があります。この言葉は春山満氏の講演テープを聞いた際に頭に刻まれたものです。不動産会社を経営していた春山氏は、進行性筋ジストロフィー症で首から下の運動機能を失い、障害をもった人の目線で福祉分野の仕事を数多く手がけることになります。そんな自分の人生体験が、この言葉に深い意味を持たせます。直訳すれば「一時的な健康者」とでも訳せるのですが、健康な人もいつ何時、病気やケガをしたり、女性は時には妊娠も経験するので、人生という長いレースの中で考えれば、健康なのはむしろ一時的なことかもしれないという考え方です。誰が、いつ介護される側に回るかもしれないからです。
だからこそ、一時的な健康を、長期にわたる健康へ、微力ながら皆様の健康を支える店であり続けるよう14周年を向かえ、心新たに努力してまいりたいと思っています。
恒川クリニック 愛知県名古屋市中村区太閤1-22-13 TEL 052-452-1270 
血液検査名(過酸化脂質):八木別法


地球冒険塾始動2005.06.01

かれこれ10年ほど前のことになる。知人に誘われて行ったサロン風飲食店が、エリカ号で世界一周をした長江さんの経営してる店だった。まっ先にお店の奥にある地球冒険塾と書かれた部屋に通された。そこはたくさんの航海の写真や、本に囲まれた空間だった。いつしか時間を忘れて長江さんの世界一周の話しに聞き入ったことを覚えている。その頃から長江さん思い描いていたものは、部屋の名のとおり「地球冒険塾」という夢だった。それは、高校生を主体とした若者達が自分達の手でヨットを操船し、世界の海を航海するというものだ。そして、その様子をドキュメンタリーにして、全国の学校や公共の場で上映し、多くの青少年たちに見てもらい、若者達に夢や勇気、希望を持つ機会に出来ないか、というプロジェクトである。現在の社会が問題や破綻をきたしているのであれば、大人の一人として、解決への方向を示す必要があると考え、帆船での航海を通じて広く世界に目を向け、未来に「夢」を描き、挑戦する若者たちの姿を伝えたいという思いが、その目に満ち溢れていた。
今から24年前、自ら約5年をかけて設計、建造した44フィートのコンクリート製外洋ヨット「エリカ号」で家族を伴い、太平洋を60日かけて横断後、カリブ海、大西洋、地中海、インド洋などを巡る世界一周の航海をした。途中、時化や嵐、座礁、落雷など幾多のトラブルにも見舞われたが、無事6万キロの航海を遂げたのである。そんな冒険家が見る次の夢。その夢の実現に向けて奔走していた3年ほど前、心臓弁膜症を煩い、死の宣告を受けてしまう。しかしNHK「プロジェクトX」に登場した、天才心臓外科医、葉山ハートセンターの須磨ドクター、磯村ドクターによる心臓の大手術を受け、奇跡的に蘇った。その後順調な回復を遂げ、今月のはじめには、なんと再び夢の実現に向かって航海に出たのだった。(今回は海洋ゴミ、漂着ゴミ等の現状調査を目的とした約3ヶ月の航海だそうだ)
心臓の生体弁は豚の心臓弁から作られ、移植後のトラブルが少ない反面その寿命は10年といわれている。人の夢と書いて「儚い」と読ませるが、限られた時間に夢を実現に向けて進んでいく姿は、まさしくキャプテンの名にふさわしい。そして、大きな勇気と希望を与えられる。

ゆとり教育2005.05.01

ある日の天声人語を読んでいると、とても心に染み入る詩が引用されていた(下記をご参照下さい)。読み返してみると、皇太子さまがご自身の誕生日にあたって記者会見で読み上げられたもので、「あなた自身の社会-スウェーデンの中学教科書」に収められている「子ども」という詩ということが分かった。この本は、法律上の義務と権利、社会制度、人間関係などを中学生に考えさせながらわかりやすく解説した教科書で、スウェーデンで91年に出版されたという。もう十数年前のことだ。
私の学生の頃の思い出といったら分厚い教科書を紐解きながら分かりにくい授業を聞いていた記憶が大半を占める。その頃、両親や先生によく言われていたことというと、「あの頃もっとやっておけばよかったと後悔しないように勉強しろ」だった。今になってあの頃を想像しても後悔する気持ちはない。やはりやってなかっただろうなと思うからだ。私の場合、そんなに楽しくて熱中できる授業がなかったのが理由か、出来が悪かったのかどちらかだろう。そんなことより、担任だった先生の顔が学年ごとに浮かんでくる。どの先生も懐かしくて会いたいと思えるからだ。さんざん怒られはしたが慕う気持ちは今も変わりはない。それは勉強の出来不出来ではない人の間としての関係で成り立っていたからだと思う。
絶えず問題になっているゆとり教育。詰め込み教育を否定し、週休2日制の導入など時間のゆとりばかりで、教えるほうも教えられるほうも一番大事な心のゆとり(間)が無くなっているのではないだろうか。中学校でこのような詩が学ぶことができるスウェーデンは、なんとゆとりのある教育だろうかと思ってしまう。


「子供」

批判ばかりされた 子どもは
非難することを おぼえる

殴られて大きくなった 子どもは
力にたよることを おぼえる

笑いものにされた 子どもは
ものを言わずにいることを おぼえる

皮肉にさらされた 子どもは
鈍い良心の もちぬしとなる

しかし、激励をうけた 子どもは
自信をおぼえる

寛容にであった 子どもは
忍耐を おぼえる

賞賛をうけた 子どもは
評価することを おぼえる

フェアプレーを経験した 子どもは 
公正を おぼえる

友情を知る 子どもは
親切を おぼえる

安心を経験した 子どもは
信頼を おぼえる

可愛がられ 抱きしめられた 子どもは
世界中の愛情を 感じとることを おぼえる

(「あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書」アーネ・リンドクウィスト、ヤン・ウェステル著/川上邦夫訳)

叡智2005.04.01

 叡智とは、すぐれた知恵。深い知性。真実在や真理を捉(とら)えることのできる最高の認識能力と辞書はある。先月の25日に幕を開けた「愛知万博」。そのテーマは 「自然の叡智」。「自然のもつすばらい仕組みと、いのちの力」に感動し、世界各地での自然とのさまざまなつき合い方、知恵に学びながら、多彩な文化・文明の共存する地球社会を創ろうというのがコンセプトである。開会当日は、雪が舞う悪いコンディションながら、4万人以上の人々が来場されたそうだ。一番人気はトヨタグループ館だったという。テレビで流れる映像は、ロボットのオーケストラや、リニアといった先端技術が目を引き、自然の叡智というよりは、人間の叡智といった感がある。いまさらPRするまでもないほど日本の技術は認められているではないか。それより、手荷物検査で廃棄されるペットボトルや弁当などが気になって仕方がない。せっかく自然がテーマなのだから廃棄されるものがリサイクルされるコーナーがあっても面白くないだろうか。食べ残した食材は生ごみを堆肥に戻しての有機肥料の実験プラントや、生ごみや来場者の排泄物を利用したバイオガス化(有機物が微生物によって酸素のない状態で分解されるときに発生するガス)でエネルギーに代える。ペットボトルはすぐリサイクルされ地元ブラザーの工業ミシンで万博Tシャツが店頭販売される。など、自然は循環してその中で活かされていることを実感できる空間こそ叡智であり、日本に求められている技術だと思うがいかがだろう。
 ノーベル平和賞受賞者のケニア副環境相、ワンガリ・マータイさんは二月に来日した際、「もったいない」という言葉を知って感銘を受け、世界に広めることを決意したという。
今まで当たり前に使っていた言葉「もったいない」を表現する場こそ、自然の叡智のわかりやすいテーマではないだろうか

ゆとり教育 2005.03.01

 ある日の天声人語を読んでいると、とても心に染み入る詩が引用されていた(下記をご参照下さい)。読み返してみると、皇太子さまがご自身の誕生日にあたって記者会見で読み上げられたもので、「あなた自身の社会-スウェーデンの中学教科書」に収められている「子ども」という詩ということが分かった。この本は、法律上の義務と権利、社会制度、人間関係などを中学生に考えさせながらわかりやすく解説した教科書で、スウェーデンで91年に出版されたという。もう十数年前のことだ。
 私の学生の頃の思い出といったら分厚い教科書を紐解きながら分かりにくい授業を聞いていた記憶が大半を占める。その頃、両親や先生によく言われていたことというと、「あの頃もっとやっておけばよかったと後悔しないように勉強しろ」だった。今になってあの頃を想像しても後悔する気持ちはない。やはりやってなかっただろうなと思うからだ。私の場合、そんなに楽しくて熱中できる授業がなかったのが理由か、出来が悪かったのかどちらかだろう。そんなことより、担任だった先生の顔が学年ごとに浮かんでくる。どの先生も懐かしくて会いたいと思えるからだ。さんざん怒られはしたが慕う気持ちは今も変わりはない。それは勉強の出来不出来ではない人間としての関係で成り立っていたからだと思う。
 絶えず問題になっているゆとり教育。詰め込み教育を否定し、週休2日制の導入など時間のゆとりばかりで、教えるほうも教えられるほうも一番大事な心のゆとり(間)が無くなっているのではないだろうか。中学校でこのような詩が学ぶことができるスウェーデンは、なんとゆとりのある教育だろうかと思ってしまう。

「子供」
批判ばかりされた 子どもは 非難することを おぼえる
殴らて大きくなった 子どもは 力にたよることを おぼえる
笑いものにされた 子どもは ものを言わずにいることを おぼえる
皮肉にさらされた 子どもは 鈍い良心の もちぬしとなる

しかし、激励をうけた 子どもは 自信をおぼえる
寛容にであった 子どもは 忍耐を おぼえる
賞賛をうけた 子どもは 評価することを おぼえる
フェアプレーを経験した 子どもは  公正を おぼえる
友情を知る 子どもは 親切を おぼえる
安心を経験した 子どもは 信頼を おぼえる
可愛がられ 抱きしめられた 子どもは
 世界中の愛情を 感じとることを おぼえる

(「あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書」
アーネ・リンドクウィスト、
ヤン・ウェステル著/川上邦夫訳)